銀行が決算書で最初に見る3つの数字

銀行が決算書で最初に見る3つの数字

私は日本政策金融公庫に26年間勤め、約3万件の融資審査に関わってきました。

その経験からお伝えすると、審査で最初に見るところは、おおむね決まっています。決算書には何十もの数字が並んでいますが、担当者が真っ先に確認するのは、そのうちのごくわずかです。

今日は、その3つをお話しします。

目次

1.営業利益が出ているか

まず見るのは、本業でどれだけ稼いだかです。

経常利益ではなく、営業利益です。補助金や不動産収入でつくった利益ではなく、本業そのものが成り立っているかを確認します。

ここが赤字だと、必ず理由の説明を求められます。そのとき問われるのは、金額の大きさではありません。一時的な要因なのか、構造的なものなのか。この違いです。

「大口の受注が期ずれしました」と説明できる会社と、「なんとなく厳しくて」としか言えない会社では、その後の話がまったく変わります。前者には次の融資の可能性が残りますが、後者は数字以前の問題として見られます。

赤字そのものより、説明できるかどうか。ここが分かれ目です。

2.借入と返済のバランス

次に見るのは、借入残高です。

ただし、金額の大小そのものを見ているわけではありません。確認しているのは、いまの利益で、何年かけて返せる計算になるかです。

たとえば借入が1億円あっても、毎年2,000万円の返済原資を生み出せる会社なら、5年で返せる計算になります。一方、借入が5,000万円でも、返済原資が500万円しかなければ10年かかります。後者のほうが、銀行から見ると重い。

「うちは借入が多すぎるでしょうか」と聞かれることがよくあります。その答えは、金額では出ません。返済力との関係で決まります。

この目線を持っているかどうかで、借入に対する感覚は変わります。

3.現預金の推移

3つ目は、手元にある現預金です。

見ているのは、残高だけではありません。前期と比べて増えているのか、減っているのか。その動きです。

とくに注意して見られるのが、利益は出ているのに現預金が減っている決算書です。この場合、必ず理由を確認されます。

売掛金が増えていないか。在庫が膨らんでいないか。設備投資に使ったのか。借入の返済が進んだのか。

理由によって評価はまったく違います。売上が伸びて売掛金が増えたのであれば前向きな話ですし、回収が滞っているのであれば警戒されます。同じ「現預金が減った」でも、中身次第です。

この3つは、決算後には変えられない

ここまで3つ挙げてきましたが、共通していることがあります。

どれも、決算が終わってからでは変えられません。

営業利益も、借入と返済のバランスも、現預金の動きも、期中の判断の積み重ねとして数字にあらわれます。決算書ができあがった時点で、その期の評価は確定しています。

ところが、多くの経営者が決算書を見るのは、税理士から完成品を受け取ったときです。そのときにはもう遅い。

融資を申し込む直前に慌てて資料を整えても、決算の中身は変わりません。だから、日頃から自社の数字を見ておく必要があります。

まずは、この3つだけでいい

決算書のすべてを理解する必要はありません。

営業利益、借入と返済のバランス、現預金の推移。この3つを、毎月確認する。それだけで、自社が銀行からどう見えているかの見当がつくようになります。

そして、次の決算までに何を直せるかを考えられるようになります。

私が支援している経営者には、月に一度、この3つを含めた数字を一緒に確認していただいています。難しい分析はしません。同じ視点で見続けることに意味があります。


上野光夫 株式会社MMコンサルティング 代表取締役/中小企業診断士 元・日本政策金融公庫 融資課長(26年間勤務・審査件数3万件超)

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