銀行員のタイプ別攻略法~担当者の性格を見極めて融資交渉を有利に進める方法~
「銀行の担当者が替わったら、急に対応が変わった」
経営者の方から、こんな話を聞くことがあります。
同じ銀行、同じ支店なのに、前の担当者は積極的に融資を提案してくれたのに、新しい担当者になった途端、反応が鈍くなった。
逆に、以前はほとんど提案がなかったのに、担当者が替わったら頻繁に訪問してくるようになった。
これは決して珍しいことではありません。
私は日本政策金融公庫に26年間勤務し、融資審査に数多く携わってきました。独立後も、メガバンク、地方銀行、信用金庫など多くの金融機関の担当者や支店長と接しています。
そこで感じるのは、当たり前ですが、銀行員も一人ひとりまったく違う人間だということです。
銀行としての審査基準や方針はあります。しかし、それを実際に運用するのは人です。
性格も違えば、営業スタイルも違います。
そこで今回は、私がこれまで接してきた銀行員をいくつかのタイプに分けて、経営者がどのように付き合えばよいのかを解説します。
1.明るくて口八丁手八丁タイプ
とにかく話がうまく、愛想もいいタイプです。
「社長、大丈夫ですよ」
「私が頑張ります」
「ぜひ当行にお任せください」
こんな言葉をテンポよく口にします。
経営者からすると非常に感じがよく、「この担当者なら何とかしてくれそうだ」と期待してしまいます。
ただし、少し注意が必要です。
話はうまくても、必ずしも顧客のことを深く考えているとは限りません。
その場では前向きなことを言っていても、実際には上司への相談が進んでいない、というケースもあります。
このタイプの担当者には、次のようなことを具体的に確認した方がいいでしょう。
- いつ上司に相談するのか
- 追加で必要な資料は何か
- 審査上の論点はどこか
- 次にいつ回答をもらえるのか
「頑張ります」という言葉ではなく、具体的に何をしてくれるのかを見ることが大切です。
2.朴訥で無口なタイプ
口数が少なく、愛想もそれほどよくない。
面談していても、
「この担当者、うちの会社に興味がないのでは?」
と感じることがあります。
しかし、こういうタイプの人が、実は銀行内部では黙々と動いてくれていることがあります。
決算書や資料をきちんと読み込み、上司に相談し、必要な稟議を着実に進めている。
銀行員も営業職なので話のうまい人は目立ちますが、会話のうまさと仕事の実力は別です。
このタイプを見るときは、雑談が盛り上がるかどうかよりも、
- 回答が早いか
- 約束を守るか
- 資料をしっかり読んでいるか
- 具体的な提案をしてくるか
といった「行動」を見た方がいいでしょう。
3.真面目で冷たそうに見えるタイプ
表情が硬い。
質問も細かい。
時には、
「この数字はどういう意味ですか?」
「この売上計画は少し甘くないですか?」
と厳しいことを言われます。
経営者からすると、あまり感じがよくないと思うこともあるでしょう。
ところが、このタイプの中には、実は非常に熱い人がいます。
表面上は淡々としていても、銀行内部では、
「この会社を何とか支援したい」
と思って、上司や審査部と粘り強く交渉してくれる。
むしろ、融資上の問題点を正直に指摘してくれる担当者の方が、長い目で見るとありがたいこともあります。
第一印象だけで「この担当者は冷たいからダメだ」と判断しないことです。
4.とにかく話し好きなタイプ
訪問すると、とにかく話が長い。
景気の話、業界の話、他社の話、銀行内部の話まで、いろいろ話してくれます。
忙しい経営者からすると、
「ちょっと話が長いな……」
と思うこともあるでしょう。
ただ、このタイプの銀行員は、情報収集という意味ではかなり貴重です。
こちらから会社の話ばかりするのではなく、銀行員の話をよく聞いてみてください。
すると、
- 最近、銀行が積極的に融資している業種
- 逆に慎重になっている業種
- 支店が融資を増やしたい分野
- 最近の金融機関の審査姿勢
などが見えてくることがあります。
銀行員との面談は、自社を説明する場であると同時に、銀行側の情報を収集する場でもあります。
5.数字重視・慎重型
決算書、試算表、借入残高、年間返済額などをかなり細かく確認するタイプです。
このタイプの銀行員に、
「これから売上は伸びます」
「この事業は絶対にうまくいきます」
と熱く語るだけでは、ほとんど響きません。
必要なのは、
- 売上計画の根拠
- 利益計画
- 年間の返済原資
- 資金使途
- 今後の資金繰り
など、数字と根拠です。
例えば「新店舗を出せば売上が5,000万円増えます」と説明するのであれば、
「なぜ5,000万円なのか」
まで説明できるようにしておく。
客単価、客数、営業日数、既存店舗の実績などを示せれば、説得力は大きく変わります。
銀行員は「感じの良さ」だけで判断しない
経営者の方に一番伝えたいのはここです。
銀行員を「感じがいい人かどうか」だけで評価しない方がいい。
明るくて話がうまい担当者が、本当に銀行内部で動いてくれるとは限りません。
反対に、無口で冷たそうに見える人が、実は一番真剣に融資案件を考えてくれていることもあります。
見るべきなのは、
「この担当者は自社のことを理解してくれているか」
そして、
「銀行内部で本当に動いてくれる人なのか」
ということです。
担当者のタイプによって、こちらの伝え方も変える
銀行員のタイプが違えば、経営者側も説明の仕方を変えた方がいいでしょう。
- 話好きな担当者なら、銀行側の情報を引き出す
- 数字重視型なら、詳細な資料を準備する
- 慎重型なら、問題点とその対策をセットで説明する
- 無口なタイプなら、言葉ではなく実際の行動を見る
- 営業積極型なら、今後の設備投資や資金需要まで伝える
もちろん、相手によって事実を変えて説明するという意味ではありません。
同じ事実でも、相手が理解しやすい伝え方に変えるということです。
まとめ|銀行員も人間。担当者を見極めることも銀行交渉の一つ
銀行員も一人の人間です。
性格も違えば、営業スタイルも違う。
得意な融資案件も違えば、銀行内部での動き方も違います。
だから、銀行名だけを見て、
「この銀行は積極的だ」
「この銀行は融資に消極的だ」
と判断するのは早い場合があります。
同じ銀行でも、担当者や支店長が替われば対応が変わることはあります。
経営者としては、担当者の性格や仕事の進め方を見ながら、こちらの説明方法も変えていく。
銀行員のタイプを見極め、うまくコミュニケーションを取ることも、立派な銀行交渉の一つです。
そして、担当者個人との関係だけに依存するのではなく、自社の事業内容、財務状況、今後の計画を金融機関にきちんと伝えておくこと。
これが、長期的に安定した銀行取引につながります。