利益は出ている。なのに、なぜ現金が残らないのか。

日本政策金融公庫で26年間、3万件もの融資審査に携わってきた中で、現場で何度も目にしてきた光景があります。

損益計算書の上ではしっかりと黒字が出ているのに、社長の表情がひどく暗いというケースです。利益は出ているはずなのに月末になると資金繰りが怖くてたまらない。そう打ち明けてくださる経営者は実に多くいらっしゃいました。

こうした悩みの原因は、実は決算書の損益計算書ではなく、貸借対照表の中に隠れていることがほとんどです。利益が出ているのに現金が残らない会社には、いくつかの共通したパターンがあります。

現金が消えてしまう代表的な要因

まず一つ目は、設備や不動産、車両といった固定資産への過剰な投資です。事業に必要な投資であっても、現金は購入時に一気に出ていきます。しかし、費用として計上される減価償却費は毎年少しずつしか認められません。そのため、帳簿上で利益が出ていても、手元の現金はすでに底をついているという状況に陥ります。身の丈を超えた投資は、じわじわと資金繰りを圧迫する要因となります。

二つ目は、他社への出資や関係者への貸付金など、すぐには換金できない資産への流出です。これらは帳簿上では資産として扱われますが、いざという時に現金に戻せません。銀行員はこうした項目を見つけると、実質的に回収不能な資金ではないかと厳しくチェックします。経営者が気づかないうちに、会社の現金が外に出たまま戻ってきていないケースは意外と多いものです。

三つ目は、売上は順調なのに現金が入ってこない売掛金の膨張です。取引先への遠慮や業界の慣習などで回収までの期間が長くなると、売上が伸びれば伸びるほど、手元の現金が不足する事態を招きます。成長しているはずなのに支払いが追いつかないという、成長の罠とも言える状態です。

四つ目は、棚に眠ったままの在庫です。仕入れた時点で現金は支払っていますが、売れるまでは利益に貢献しません。過剰な在庫を持つことは、現金を棚の中に閉じ込めて眠らせているのと同義です。

最も注意すべき見落としポイント

そして、最も見落とされやすいのが、借入金の返済が利益を食い尽くしているケースです。借入金の元本返済は費用ではないため、損益計算書には一切出てきません。例えば100万円の利益が出ていても、毎月の返済が80万円あれば、手元に残る現金はわずか20万円です。借入残高が大きな会社は、黒字であっても常に資金繰りが綱渡りになってしまいます。

最後は、役員報酬の設定ミスや個人的な支出の混入です。節税を意識しすぎて役員報酬を高く設定しすぎたり、会社のお金と社長個人の支出が混ざり合ったりしていると、会社に現金が残る前に外部へ流出してしまいます。

銀行は現金の消え方を読み取っている

利益が出ているのに現金が残らない会社には、間違いなく稼ぐ力があります。しかし、せっかく稼いだ貴重な現金が、どこかで消えてしまっているのです。銀行員はこの現金の消え方を、貸借対照表の数字から克明に読み取ります。社長が自覚していない問題を、銀行側はすでに見抜いていることも少なくありません。

自社の現金が一体どこに消えているのか。一度立ち止まって、数字の裏側を真剣に確認していただくことをお勧めします。

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