「収支見通し」は事業計画書の根幹をなす部分であり、融資担当者が企業維持力や返済能力を判定する重要なポイントです。
しかし、多くの場合「起業してみなければ分からない」のが実態なので、起業家が記入するのにもっとも頭を抱える項目です。
融資担当者がチェックするポイントは次のとおりです。
①投資内容と資金調達方法は妥当か
収支予測の前提となるのが、「起業時に何にいくら投資するのか」という投資内容に関する部分です。予定している事業内容に対して妥当な投資か、過大な投資ではないか、投資効果は見込めるか、という点が検証されます。
資金調達方法とは、必要な投資金額をどこから調達するのかということです。自己資金や借入について、「間違いなく調達できるか」という観点でチェックされます。
②予想収益の実現可能性はどうか
日本政策金融公庫の「創業計画書」の場合、「8 事業の見通し(月平均)」という欄があり、ここに記載した内容の実現可能性がチェックされます。起業家がもっとも記入するのに苦労する部分ですが、同様に融資担当者も非常に判断に迷う箇所です。融資の稟議書には、予想収益の根拠を明記しなければならないからです。
たとえば飲食店開業で、売上を「客単価3,000円で30席あって1日あたり1回転する(30人のお客様が来店する)」と予測した場合、融資担当者から「1回転するという根拠は何ですか?」と質問されます。この難しい質問にうまく答えることが、融資OKの結論を引き出すために肝要なのです。
また、融資担当者がもっとも心配するのが、「融資後短期間の間に返済ができなくなること」です。その心配を解消させるために、起業後すぐに売上が実現するという説明ができることが理想です。とくにBtoBの事業を予定している場合、すでに起業前の段階で顧客となる企業を確保していると融資担当者を安心させることができます。
原価、経費などについても、「業界平均と比べて妥当か」「経費の金額が過少ではないか」「(家賃などが)高コストすぎないか」といった観点でチェックされます。
③資金繰りの見通しはどうか
売上・収益の実現可能性に加えて、資金繰りの見通しも重要です。とくに、商品やサービスを提供しても代金が入るのに長期を要する事業の場合、うまく資金繰りができるかという観点です。
たとえば、介護関係など保険からの入金を主な収入源とする事業は、実際にお金が入るまで数カ月以上かかるので、その間の資金繰りも考慮に入れて融資担当者に説明することが大切です。
④収益が予想よりも少ない場合の補てん方法はあるか
予想収益に妥当性が認められたとしても、「起業してみたら予想よりも売上が少なかった」ということがあります(実際にはほとんどの起業家がそうです)。もし、補てんできるものがあるならば、融資担当者へ説明しておくことが有効です。
たとえば、配偶者に安定収入がある、アパート経営をしており家賃収入があるなど、別の収入源があるなら積極的に情報開示することをお勧めします。