審査のチェックポイント「経営者としての資質」について

審査におけるチェックポイント「経営者としての資質」の視点について説明します。
いったいどうやって「経営者としての資質」の有無を判断するのでしょうか?

日本政策金融公庫の場合、膨大な数の創業融資を行ってきたことから、起業家のタイプと経営者の資質の有無の判断について経験則をもっています。

具体的には、次のような観点で把握しようとします。

①どんな経験を積んできたか

これまでの経歴や職歴の中で、どんな経験を積んでどのようなスキルやノウハウを得てきたのかを把握します。今回の事業にどのように関連しているのか、ということが重要です。

金融機関は、「経験を積んだ分野で起業するほうが成功する確率が高い」「経験のない事業はうまくいかない」という経験則をもっています。

事実、起業の失敗事例の中には、未経験の分野で起業したものが散見されます。たとえば、居酒屋を開業するのに、飲食店の勤務経験が全くない人だと失敗する可能性が高いという判断になります。
また、店長や役職についていたなど、マネジメント能力の高さを裏付ける経歴があれば、プラス材料になるので積極的に示すことが有効です。

②営業や接客はできるか

中小企業は、飲食店や美容院などに代表されるように、社長が接客する場合が多くあります。また営業活動も、社長自身が出ていかなければならないことがほとんどです。そのため接客や営業ができる人物かどうか、ということがチェックされます。

では、どうやって融資担当者が接客や営業の能力を把握できるのでしょうか?

唯一把握できるのは、融資の面談の場面です。予定の業種にふさわしい雰囲気を持っている人かどうか、お客さんの立場からみていい印象の人か、会話のキャッチボールがうまくできるかどうかが、重要なポイントになります。

③論理的思考はできるか

経営者は、サラリーマンよりもハイレベルな思考能力が求められるのが普通です。これも面談の会話の中で、「頭の回転が速い」「頭脳明晰な人だ」といった印象を植え付けられると、融資担当者が稟議書に書く「人物印象」という欄が高評価になるのです。

④事業経営への熱意と覚悟はあるか

起業することに関して真剣に準備をしているか、是が非でも成功させるという意欲に溢れているか、ということが問われます。
中小企業経営者の中には「景気が悪いからうちの事業が低迷している」と発言する人がいますが、金融機関は「それは言い訳にすぎない」と冷ややかな眼で見てしまいます。起業するときは「何事も自己責任」という姿勢であるべきで、その覚悟を融資担当者が感じるように振る舞うことが重要です。

⑤金融機関に対して正直に情報開示しているか

融資担当者が、確信をもって融資OKの結論を出すためには、起業家に関して知るべき情報を正確に把握することが必要です。そのため、正直に情報開示をする姿勢がある起業家のほうがスムーズに融資が決まります。

⑥お金や数字に関する適切な考え方(計数観念)はあるか

お金や数字に関する説明がうまくできるか、返済や支払いに関して期日を守る人かどうか、ということがポイントです。

⑦経営者に向いている性格か

経営者としてふさわしいタイプかどうか、面談のときの雰囲気で把握しようとします。融資担当者が「元気がある人」「危機を乗り越えるタフさがある」「前向きな考え方ができる」という印象をもてば、安心して融資できるという気持ちになるものです。

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