最近は、日本政策金融公庫や制度融資の事業計画書(創業計画書)の書き方について、多くの書籍やインターネット上に記入事例のようなものが掲載されています。
融資を申し込みしようとする起業家の中には、それらをそっくり真似て創業計画書を書こうとする人がいます。また、自分で書こうとせず、専門家と称する人に作成を依頼する人もいます。
事業計画書を書くノウハウを得るために、書籍やネットから情報を得ることや、詳しい人にアドバイスを受けるのはとても有意義なことです。
しかし、書籍やネット情報の事例とそっくりな創業計画書にするのはやめたほうがいいと断言します。ましてや、他人に事業計画書の作成を丸投げするのはもってのほかです。
事業計画書は、人マネではなく「あなた色」、つまりオリジナリティを出すことが重要なのです。
人マネの事業計画書がNGである理由は三つあります。
一つは、融資担当者との面談のときに、「自分の言葉」でうまく説明できない可能性があるからです。事業計画書に書いてあることと、実際のビジネスプランに微妙な相違があるために、起業家の説明することに整合性がなくなります。
融資担当者は、「書いてあることと言っていることがなんとなく違う」という印象を受け、「事業計画が不明確で定まっていない。起業するのは時期尚早ではないか」という判断をしてしまいます。
二つ目の理由は、起業して事業を軌道に乗せるためには、独自の強みやオリジナリティが必要だからです。融資担当者やその上司が「ありふれた内容のビジネスプランだ」と感じると、商品やサービスについて競争力が弱いと思うため、収支見通しに確信がもてなくなります。
三つ目の理由は、融資担当者に「そもそもこの人は本当に起業する予定があるのだろうか?」と疑われる可能性があるということです。
私も融資担当者のときに、「どこかで見たような事業計画書だ」とか「内容が出来すぎているのではないか」と感じた場合は、必ず疑ったものです。なんとしても起業したいという「熱意」や「覚悟」が感じられないからです。
何万人もの融資申込者の中には、起業するつもりなどなく「融資だけを受けて逃げよう」という人がゼロではないからです。起業家が事業計画書の内容を明確に説明できなければ、疑いの眼で見られることがあり得るのです。
このように、人マネ事業計画書を提出してしまうと、信用してもらえない可能性があります。
オリジナリティを出すのは、それほど難しいことではありません。何かを真似しようとするのではなく、自分自身の考えや計画を記入する姿勢があれば十分です。
融資担当者との面談で、事業計画書に書いたことについて自信をもって説明できるように、自分で考えた内容を盛り込めばいいのです。完璧に作り上げようとする必要はなく、多少表現が稚拙でも構いません。
ただし、融資を受けるための事業計画書は、見る人が理解できないと問題です。できるだけ客観的にみて、わかりやすい表現をすることも心がけてください。