「できるだけ多く借りたい」
創業融資を考えている方の多くが、こう思っています。設備費も運転資金もしっかり確保して、余裕を持ってスタートしたい。その気持ちはよく分かります。
ただ、元日本政策金融公庫の融資課長として5,000件以上の創業融資の審査に携わってきた私の経験から言うと、「いくら借りたいか」ではなく「いくらなら通るか」という視点を持つことが、融資成功への近道です。
融資額には「通りやすいゾーン」がある
公庫の創業融資で一番通りやすいのは、1,000万円以下です。
最近は1,500万円程度でも、自己資金がしっかりあり、計画が妥当であれば通るケースが増えてきました。しかし、2,000万円を超えてくると、公庫単独では正直かなり難しくなります。
先日のYouTubeライブでも、店舗ビジネスで開業を目指す方からご相談がありました。自己資金350万円で、設備費・運転資金を合わせて1,500万円が必要とのこと。融資額は1,150万円です。
この場合、自己資金の割合は約23%。決して高くはありませんが、売上の見込みに根拠があり、計画がしっかりしていれば、十分に実現可能な水準です。
面談では「柔軟な姿勢」が武器になる
公庫の担当者と面談した際に「ちょっと金額が大きいですね」と言われることがあります。
ここで「いや、どうしてもこの金額が必要なんです」と押し通そうとすると、担当者も困ってしまいます。結果的にゼロ回答、つまり融資が一切出ないという最悪の事態にもなりかねません。
おすすめは、あらかじめ「ここは削れる」というポイントを整理しておくことです。たとえば、設備を購入ではなくリースに切り替える、運転資金を少し絞るなど、柔軟に対応できる余地を見せることで、担当者も「この人は現実的に考えている」と安心します。

自己資金の「見せ方」も大切
自己資金は、総事業費の30%以上あるのが理想です。
ここで大事なのは、そのお金を「コツコツ貯めてきた」と証明できることです。ある日突然通帳に大きな金額が入っていても、公庫の担当者は評価しません。毎月の給与から少しずつ積み上げてきた履歴が、あなたの「計画性」を物語るのです。
金額が大きくなるなら「セット活用」を
2,000万円以上の資金が必要な場合は、公庫だけに頼らず、民間金融機関の保証協会付き融資を組み合わせるのが現実的です。
公庫で1,000万円、銀行の保証協会融資で1,000万円というように分けることで、それぞれの審査ハードルを下げることができます。実際にこの方法で順調に資金調達を進めている方もいらっしゃいます。
まとめ
創業融資で大切なのは、「借りたい額」と「通る額」のバランスを見極めることです。
自己資金をしっかり準備し、売上見込みの根拠を固め、面談では柔軟な姿勢を見せる。この3つができていれば、創業融資の成功率は大きく上がります。
「一発勝負だから絶対に失敗したくない」という方ほど、事前の準備を入念にしていただければと思います。
