本やインターネットでは、「起業しても3年以内に半分以上が廃業に追い込まれる」といったショッキングな記事がまことしやかに書かれていることがあります。
起業後の存続率についてはあまり正確なデータがないのですが、起業後3年以内に半分まではいかないにしても、3~4割くらいは廃業しているというのが私の肌感覚です。
ところが、一つ興味深いデータがあります。
日本政策金融公庫の「新規開業パネル調査」(2011年10月)というものです。この調査は、日本政策金融公庫の創業融資を受け、2006年に開業した企業に対し、5年間に渡ってアンケートを依頼して存続状況などを調査したものです。データはやや古いですが、今でも示唆に富む内容です。
同調査によると、開業して5年後に存続している企業が83.3%あるという結果になっています。ただし、回答している企業の割合が年々減っているので、廃業率はもう少し高い可能性はあります。とはいえ、起業して5年経過しても8割以上の企業が残っているのです。
調査対象は、日本政策金融公庫から創業融資を受けている起業して間もない企業です。つまり、日本政策金融公庫から融資を受けた起業家は、事業が長く続いている割合が高いといえます。一般的な起業家の存続率と比べると、はるかに高いということです。
これはなぜでしょうか?
一つには、起業時に融資を活用して、ある程度資金に余裕をもってスタートしたからでしょう。
同調査では、起業した2006年には約4割の企業が赤字基調だったという結果が出ています。赤字であっても資金のバッファーを持っていたからこそ耐えることができたわけです。
もう一つの理由としては、日本政策金融公庫の創業融資の審査をパスしたということです。
アンケート対象の起業家たちは、金融機関を説得して融資を受けるための事業計画書を作成して、日本政策金融公庫へ説明しました。「融資が通りやすい事業計画書を作る」中で、自らのビジネスプランをブラッシュアップすることができて、事業の耐久力を養うことができたものだと推測されます。
さらに、日本政策金融公庫が「この起業家なら融資しても事業を長く続けてきちんと返済してくれる」と判断して融資を実行したわけです。
融資をする立場の日本政策金融公庫からみると、融資先企業が長く続くのは当然のことです。多くの起業家が短期間に廃業して返済ができなくなると大問題ですから。
ということで、極論かもしれませんが、起業して事業を長く続けたければ、日本政策金融公庫の創業融資を受けるのが有効だともいえます。
創業融資を受けるために事業計画書を金融機関に見せれば、事業の成否について金融機関目線で客観的に評価してくれることになります。
ビジネスプランを他社に評価してもらうことなく、独りよがりの判断だけで起業を決行してしまうと、多くの場合うまくいかないものです。
誰に評価してもらうかが問題ですが、日本政策金融公庫に評価してもらうことはとても意義があることです。
万一、融資を申し込みしてもNGになったら、ビジネスプランについて今一度再考するほうがいいといえます。