私は、よく「面談のときはどんな格好で行けばいいでしょうか?」という質問を受けます。そこで、融資の面談に望むときの服装や姿勢などについて解説します。次のポイントに留意してください。
ポイント①予定している事業にふさわしい格好で
服装はそれほど気にする必要はありません。採用面接のような感覚でスーツを着ようとする人がいますが、着慣れていないと落ち着かないし「服に着られている」感じになってしまいます。服装はその人の内面を表すことがあるので、携わっている仕事で着ているものがしっくりきます。つまり、普段の仕事に行くときの服で問題ありません。
また、起業する事業になんとなく似つかわしい格好であれば最適です。たとえば、IT系の人は普段からラフな格好をしている人が多いので、それでも違和感はありません。
ポイント②面談は1人で行く
融資の面談には、経営者(または代表者になる人)が単独で行くのが大原則です。
日本政策金融公庫に限らず、金融機関は第三者の面談同席は原則として断ります。融資担当者の立場からみると、ズバリ言って「怪しい」からです。私が融資担当者のときの経験からも、複数で面談に来る人は融資後に返済が滞る確率が高かったです。
最近は3名くらいで出資して起業するケースもありますが、代表者となる人(複数が代表取締役になる場合は実質的な代表者)を決めてその人だけが行くことが大切です。したがって代表者は、起業に関するすべての情報を頭に叩き込んで臨む必要があります。融資に関しても、代表者が全責任を負うことを覚悟しなければなりません。
ただし例外として、夫婦で飲食店を始める場合などは二人でも構わないと思います。
ポイント③緊張せず真摯に対応する
「面談では緊張しないでください」といっても、多くの方は緊張します。融資を受けることをなんとなく引け目に感じたり、「面談は審査を左右する大切な場」という思いが強かったりして、緊張するのは無理もないことです。
でも、ご安心ください。融資担当者も、初対面ですから多かれ少なかれ緊張しています。融資を受ける人は、日本政策金融公庫からみると大切なお客様です。もちろん「オレは客だ」的な対応はダメですが、逆に妙にへりくだる必要もありません。お互い対等な立場と思えば、それほど緊張せずに対応できます。
面談の基本的な流れは、融資担当者が質問してそれに回答するという形式です。融資担当者も人それぞれで、矢継ぎ早に質問する人がいる一方、とてもゆっくり話す人もいます。できるだけそのペースに合わせて、うまく回答していけばいいのです。
なお、面談に要する時間は、1時間~1時間半くらいです。融資担当者はできるだけ短時間に要点を知りたいという気持ちがあります。したがって「しゃべりすぎ」は禁物で、逆に「はいそうです」といった紋切型の回答に終始しては説得できません。
ポイント④創業計画書に書いてあることでも面倒がらず回答する
すでに創業計画書に書いたことであっても、融資担当者が質問してくることがあります。「そこに書いてるでしょ」と言いたくなるところですが、ていねいに口頭で説明するよう心がけてください。
とくに経歴の部分は、職業経験について時系列で質問されることが多いのです。面談の前に「〇年△月からどこに勤めた」といった経歴、答えられるように思い起こしておくといいでしょう。
ポイント⑤大きすぎる夢ではなく近い将来を語る
多くの起業家は、10年先20年先の大きな夢を持っています。「将来は東南アジアの恵まれない子供たちのために学校をつくりたい」など、面談のときに熱く語る人がいます。しかし、そうした先の夢を語っても響かないどころか、「非現実的な夢を見ている人」と思われるだけです。
起業して半年~1年先のごく近い将来の目標について、明確に説明するのが妥当です。その目標が、高い確率で達成できると確信してもらえるようにしましょう。
ポイント⑥融資担当者は小学5年生
商品・サービスやビジネスモデルを説明するときには、「融資担当者は小学5年生だ」と思ってください。つまり、小学5年生でも理解できる言葉で、かみくだいて説明することが重要です。
けっして、融資担当者は理解力がないと言っているのではありません。あなたのビジネスが斬新なものであればあるほど、詳しい知識を持っている人がいないからです。融資担当者だけではなく、その上司にも理解してもらうためには、誰でも分かる説明が必要です。
もっとも重要なことは、融資担当者が何をどんな意図で質問しているのか、よく聞いて判断しながら回答することです。質問の意味が分からなければ、遠慮せず「どういう意味でしょうか?」と聞いてください。
回答して納得していない表情であれば、粘り強く説明を繰り返すことが大切です。融資担当者が気持ちよく「融資OK」の稟議書をまとめられるように、分かりやすく説明してください。