店舗や事務所を借りて起業する場合は、いくつか留意すべき点があります。
①物件は融資申し込み前に決める
借りる物件は、融資を申し込みする前に決めておかなければなりません。「東京都内のどこかで」というのでは、融資を決めてくれないからです。「この物件を借りて始めます」と明確に特定して、物件概要書などの資料を提出する必要があります。
物件を決めるといっても、賃貸契約をしなければならないわけではありません。賃貸契約を締結するのは、融資が決まってお金が振り込まれた後でいいのです。
しかし、不動産屋に「この物件を借りたいのでキープしといてください」とお願いしても、「もし他の人が先に契約を希望されたら応じざるを得ません」と言われることがあります。とくに飲食店などは、立地条件のいい物件が出ると取り合いになるケースがあります。申し込み前に契約するのがベターといえますが、万一審査にパスしなければ困ってしまいます。この問題については万能といえる解決策はないですが、たとえば物件オーナーの理解を得るなどしてうまくキープするほかありません。
②「居抜き物件」の落とし穴
飲食店を開業したい起業家の中には、以前も飲食店であった「居抜き」の物件を探す方が多いですね。厨房の水回りや換気設備などが残っているので、初期投資が少なくて済むからです。
しかし、居抜き物件には落とし穴があることに注意してください。立地はいいように思えるのに、飲食店が出店しては廃業することを繰り返している物件があります。こうした物件は、地域住民や通行人から「よく飲食店が潰れる場所」と認識されていることがあります。
それだけなら工夫次第で繁盛店にできるかもしれませんが、問題は以前の店の経営者が日本政策金融公庫の融資を受けている場合です。万一その融資の返済が滞っていると、日本政策金融公庫にとってみると、同じ店舗物件に二重に融資をすることになります。
今回申し込みした人にその事実を伝えることはないですが、ネガティブな判断になりがちなのです。それだけでNGになるとはいえませんが、どうしてもマイナス材料の一つになってしまいます。
したがって、居抜き物件を探す場合は、以前の飲食店の繁盛ぶりなどについて不動産屋さんや地域の人にヒアリングして決めることが大切です。
③又借りや間借りを考えている場合
賃貸契約は別の人がしていて、そこを又借りや間借りして事業を始めたいと考えている方がいますが、賃貸契約で禁止する旨が入っているのが普通です。その場合は、物件オーナーが認めていることが前提になります。融資担当者にオーナーが認めていることの証拠を提示しなければ、融資の対象としてくれないことに留意が必要です。
④レンタルオフィス(シェアオフィス)やバーチャルオフィスを利用する場合
最近は、起業当初はレンタルオフィスを利用するという方が増えています。しっかりとしたシステムのオフィスであれば、融資に関して大きな障害となることはありません。住所だけを借りる形のバーチャルオフィスも問題はないですが、実際の拠点をどこにするのか、融資担当者へ明らかにすることが重要です。
⑤自宅兼事務所として借りる場合
自宅兼事務所を賃借する場合は基本的に問題ないですが、事業を開始するスペースがあることを図面などで説明することが大切です。とくにエステサロンなど、機械や備品を購入するために創業融資を受ける場合は、どの部屋に設置するのかを伝えてください。
なお、創業融資が対象とする資金使途は事業に関するものだけです。物件を借りるための敷金・保証金や内装工事費については、住居部分は対象外なので注意してください。