事業戦略やマーケティングについて、考えなくてもいい?

融資を受ける事業計画書の例として、日本政策金融公庫の「創業計画書」を見てみると、次の8項目について記入する様式になっています。

1. 創業の動機

2. 経営者の略歴等

3. 取扱商品・サービス

4. 取引先・取引関係等

5. 従業員

6. お借入の状況

7. 必要な資金と調達方法

8. 事業の見通し

この様式は、私が昭和60年に当時の国民金融公庫に入った頃から、ほとんど変わっていません。30年以上という長期に渡って使われている様式です。

もし、この創業計画書の様式を使って不良債権が増えるようなことがあれば、「内容を大幅に見直す必要がある」となるでしょう。でも、まるでロングセラー商品のように長く使い続けられているということは、とくに問題が発生していないということを物語っています。つまり日本政策金融公庫では、この様式の創業計画書が創業融資の審査をする資料として最適だと考えられているのです。

いくつか特徴的な部分があります。一般的な事業計画書といえば、「経営理念」、「事業戦略」、「マーケティング計画」などが入っていますが、そのような欄は一切見当たりません(その後、最新の様式では簡単な欄ができています)。


いずれも、起業志望者が「どうしようか?」と頭を抱えてしまいがちな項目ですが、創業計画書を作成するプロセスでは、全く考える必要はないのです。起業家が事業を軌道に乗せるために重要な要素には違いないのですが、日本政策金融公庫の融資審査の材料としては優先順位が低いということです。

また、もっとも重要な収支見通しを記入する「事業の見通し」の欄は、とてもユニークな形式です。収支見通しは、「1年後、2年後、3年後…」と時系列で表を作るのが普通ですが、なぜか「創業当初」と「軌道に乗った後」という二つの列だけで構成されています。私の推測ですが、この形式になっている理由は、審査の担当者が比較的容易に予測の妥当性を検討できるからだと思います。表形式で数年後までの数字が並んでいても、書類の量が多くなるうえに実現可能性の判断がしにくいからでしょう。

創業融資を受けられるのは日本政策金融公庫のほか、都道府県や市区町村が実施している「制度融資」というものもあります。

「制度融資」の場合は、各都道府県にある信用保証協会という機関の保証を受けることが融資の条件になっています。この信用保証協会にも「創業計画書」の様式があり、東京信用保証協会のホームページからダウンロードできます。
東京信用保証協会の「創業計画書」の様式をみると、内容は日本政策金融公庫のものとよく似ているシンプルなものです。用紙の枚数こそA4サイズで3枚ですが、実質的には日本政策金融公庫の1枚の用紙と変わりません。

日本政策金融公庫、信用保証協会ともに、創業計画書は非常にシンプルにできており、比較的簡単に作成できる事業計画書なのです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次