融資を申し込みした起業家の中には、「金融機関の担当者は私のビジネスプランを理解してくれない」と嘆く人がいます。
融資担当者との面談で一生懸命にビジネスプランを説明したつもりが、ネガティブな雰囲気を感じることがあるからです。
金融機関の担当者がこのような反応になる大きな理由の一つは、起業家と金融機関の考え方にギャップがあるからです。
起業家は、一般的に次のようなアイデア重視の発想で起業を考えています。
①ビジネスプランに自信がある
自分が考えた商品・サービスやビジネスモデルに自信を持っている方が多く、金融機関の担当者に対して強くアピールしようとします。 ②起業すればうまくやっていける 「創業融資を受けることができれば、起業して軌道に乗せられるはずだ。」と、楽観的に考える人が少なくありません。 ③マーケティングや営業の計画が大切 起業時には見込み客がなくても、「マーケティングや営業を頑張ればお客様を確保できる」と、集客のためのコストや活動を重視しています。 ④多くの資金を元に準備万端で起業したい 「ぎりぎりではなく余裕ある資金をもって起業したい」と考え、多めに融資を受けたいと思います。 ⑤融資の返済は長期にしたい 毎月の返済金額が少ないほうが安心だと思うので、長期返済を希望します |
一方、金融機関の担当者は「返済可能性」や「リスク低減」を重視しているので、次のような見方をします
①経営者としての資質はあるか
経営者として事業を軌道に乗せるためのスキルやノウハウを持っているか、借入をきちんと返済する姿勢があるか、といったことを見極めようとします。 ②現在の財政状態はどうか 現在どれくらいの資産(不動産や預金など)と負債(ローンなどの借入金)があるのか、という観点でチェックします。資産は多いほうが、負債は少ないほうが起業後の企業維持力が高いという考え方です。 ③収支見通しはどうか 「起業して売上をどれくらい上げることができるか、返済するだけの利益を出せるか」という観点です。マーケティングや営業で集客することよりも、「すでにお客様を確保できる見込みがあるかどうか」という点を重視します。 ④リスクを抑えるために融資金額は必要最低限にする 融資金額については、万一返済できなくなったときの貸し倒れを少なくするために、必要最低限にすべきという考え方です。そのため融資申し込み金額に対して減額して融資することがあります。 ⑤返済は短めに設定したい 起業家の考え方とは真逆で、返済は短めにするのが妥当とされています。これは、「期間リスク」といわれる、長期にすればするほど倒産する確率が高い(企業は長く継続することが難しい)という考え方に基づいています。制度としては「ご融資期間10年まで」となっていても、5年返済でしか認めないという結論にすることがあるのです。 |
【起業家と金融機関のギャップ まとめ】
起業家と金融機関のどちらが正しいか間違っているかは別として、考え方の違いはなかなか解消できないのが実態です。
融資を申し込みする際は、こうしたギャップを理解したうえで、金融機関の視点を意識した準備をすることが重要です。