多くの起業家の皆さんは、「審査が通る確率ってどれくらいだろう?」と、不安に思っているかもしれません。
創業融資を申し込みしたことがある起業家には、「簡単にパスすることができた」という人も、「審査はとても厳しくて素人がやろうとしても難しい」という人もいるため、不安と混乱を招いてしまうのです。
そこで、日本政策金融公庫で長年融資課長として審査に携わった私が、その疑問にお答えします。
審査がOKとなる確率のデータは公表されていませんが、おおむね50~60%くらいだとお考えください。ただし、この数字は一定ではなく常に変動しています。あくまでも、目安の数字だと認識してください。
私が日本政策金融公庫の支店で創業融資の案件を担当していた頃、時期によっては10件中2~3件しか融資OKにできなかったことがあれば、7~8件ということもありました。
その時期の申し込み案件の内容や、景気の変動や業種を取り巻く環境変化によって、審査判断に変化が起きることがあります。
たとえば、「最近○○業の倒産が多い」という状況が続くと、その業種の創業融資の審査が辛めになったりするのです。
決して日本政策金融公庫が50%になるように調整しているのではありません。時期によって変動が大きいながらも、長期的に平均をとると結果的に50~60%になっていたということです。あくまでも私が在職していた頃の話ですが、今も大きくは変わっていないと推測しています。創業融資の審査は、入学試験のように「上位○○人が合格!」という相対的なものではなく、資格試験のように「○○点以上取った人は合格!」という絶対的な基準もありません。金融機関が個別に「この人へ融資してきちんと返済できるかどうか」という観点で検討をした結果で、OKかNGかが決まるのです。
審査を通るのが簡単か難しいかは、申し込みをした起業家それぞれの印象次第といえます。
ただ、ここでぜひご理解いただきたいことがあります。審査がパスする確率はおおむね50%ですが、問題は全体の内訳です。
私が日本政策金融公庫で審査を担当していた頃に、創業融資の申し込み案件全体を俯瞰すると、審査判断が比較的容易な層というものがありました。それは、「この起業家は誰がみても問題なく融資OKにできる」という層と、逆に「どう考えても融資は無理だ」という層です。
つまり、融資担当者からみると、上位の15%と下位の15%は、判断するのにそれほど迷わないのです。前者と後者の割合は同程度で、それぞれ全体の申し込み案件の15%程度を占めていました。
問題は、残りの70%の起業家です。融資担当者にとって、この70%の起業家からの申し込み案件についてはとりわけ慎重に検討しますが、結果的にはこの70%の起業家のうち40~50%がNGになってしまいます。
つまり、多くの起業家が「審査上のボーダーラインにある」といえるのです。うまくやれば融資OKになるけれど、下手すると断られてしまう可能性があります。
最近は、起業セミナーなどで勉強している起業家が増えていますが、間違った理解をしたために損してしまう方も散見されます。
そこで本サイトでは、多くを占める「審査でボーダーラインにある起業家」の方々の融資OKを可能にするため、事業計画書の書き方を中心にして、押さえておきたい重要なポイントを解説していきます。