日本政策金融公庫の創業融資を申し込むタイミングによって、審査で着目されるポイントが変わってきます。
ここでは、「起業前」「初回税務申告の前」「初回税務申告の後」の三つに分けて、審査をパスするためのコツについて解説します。
①起業前に申し込む場合
審査がもっとも通りやすい時期です。できるだけ起業前に申し込みすることをお勧めします。たとえ自己資金だけで起業できるとしても、創業融資を受けておいておくのが賢明です。起業したらお金は急激に減っていくので、キャッシュに余裕をもっておくほうが安全だからです。
②起業後1回目の税務申告期を迎える前の段階で申し込む場合
1回目の税務申告期を迎える前の時期(例:4月に個人事業で起業して11月)に申し込む場合の留意点について説明します。
審査でチェックされるのは、事業を開始してからの売上や収益などの実績です。しかし、税務申告前なので、実績を証明できる決算書などの資料がありません。したがって、自分で(または税理士に依頼して)損益の状況を示す資料を作成する必要があります。
多くの場合、起業してしばらくは損益が赤字になりがちです。審査上重要なポイントは、申し込みした直近の損益がどうかです。たとえば4月に起業し11月に申し込みする場合、「9月までは赤字で10月に黒字になった。11月も順調に推移している。」という動きであればさほど問題はありません。
しかし、申し込み時点でもまだ赤字が続いている場合が厄介です。融資担当者から「まだ採算がとれていない」とみられてしまうからです。その場合に重要なことは、「起業してこれまでは赤字だけど、今後は黒字に転換する見通しである」と説明することです。今後の売上増加と採算見通しを、根拠ある数字で示すことによって融資を受けられる可能性はあります。
③起業後1回目の税務申告以降に申し込む場合
1回目の税務申告を終えた後に申し込む場合は、「新創業融資制度」における自己資金の要件がなくなることが一つのメリットです。「税務申告を終えていない場合は創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」とありますが、これを気にしなくてよくなるわけです。
ただし、税務申告時の決算書の内容が、審査に大いに関係することになります。起業して1回目の税務申告では、起業時にかかったコストを一気に計上するので、「創業赤字」になることがあります。すると、税務申告時の決算書を示すだけでは、融資担当者が「赤字で厳しい」という判断をしかねないので注意してください。
大切なことは、備品や消耗品など初期投資として使った経費を除いた損益について、表を作成するなどして融資担当者へ説明することです。それが黒字であれば、「事業が採算ベースに乗った」といえます。万一それも赤字で、直近の月もまだ採算がとれていなければ、かなり厳しい見方をされてしまいます。
その場合は、今後の見通しや黒字化するための方策について、説得力ある説明資料を提示することが欠かせません。