創業融資を受けるための事業計画書とは

創業融資を受けたいと思う起業志望者が、事業計画書の書き方について悩む原因の一つは、「複雑なものを作らなきゃいけない」と思い込んでいることです。パワーポイントを使ったビジュアルで数十ページに及ぶものをイメージするために、途中で挫折してしまいがちです。

実は、創業融資を受けるための事業計画書は、複雑な内容にしてはいけません。「用紙1枚」にまとめることが重要なのです。

創業融資を取り扱っている金融機関で代表的な日本政策金融公庫の「創業計画書」は、A3横の用紙1の様式です。注釈に「所定の記載枠に記載内容がおさまらない場合は別紙(様式適宜)をご作成ください」とありますが、1枚の用紙にまとめることが基本だと認識してください。

1枚だけとなると、記入スペースがとても狭いですから、無駄なことは一切書けません。あなたが考えているビジネスの内容を、ギュッと凝縮して紙に表現すればいいのです。ですから、パワーポイントで何十枚ものスライドを作るのと比べると、はるかに簡単にできるのです。

それでは、なぜ用紙1枚にまとめるのがいいのでしょうか?

事業計画書を作る目的を思い出してみましょう。
「起業のための資金調達」という目的、その中には
「エクイティファイナンス」、「創業補助金」、「デットファイナンス」の三つがあります。

「エクイティファイナンス」、つまり個人投資家やベンチャーキャピタルなどから出資を受けようとする場合は、見せる相手にビジネスプランがいかに有望で成長性を感じさせるものかを理解させる必要があります。「この起業家のプランはすごい」と思わせることが重要で、今までにない斬新なビジネスプランが多いこともあり、事業計画書の量が多くなるのが普通です。
審査員に対して審査基準を意識してアピールする必要がある「創業補助金」も、ある程度ボリュームある内容にしなければなりません。

それに対して、金融機関から融資を受ける「デットファイナンス」では、むしろ膨大な事業計画書を提出すると担当者が嫌がります。
金融機関の担当者は、数多くの融資申し込みの審査を行う必要があるので、一目瞭然で理解できるシンプルな事業計画書のほうが断然いいのです。担当者の立場では、膨大な事業計画書は、読むのに時間がかかるうえにポイントが絞りにくいので、むしろ粗が見えることがあります。

また、金融機関の審査のプロセスは、通常「稟議書」という形で案件が担当者から上司へ、そして最終的な決裁権者(融資の可否を決める人)まで回っていきます。用紙1枚の事業計画書はその稟議書の一部としてついていきますが、膨大な事業計画書だと書類が分厚くなるので、それを読むのが担当者に限られて決裁権者までたどり着かないこともあり得ます。案件が多いので、大量の書類を回すことはできないからです。

日本政策金融公庫の創業計画書には、「この書類に代えて、お客様ご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」と注書きがあるので、膨大な事業計画書を提出する人がいますが、ほとんどの場合無駄な努力だといえます(例外として「資本制ローン」を利用する場合は、エクイティファイナンスに準じた事業計画書が妥当です)。

創業融資を受けるための事業計画書は、「このビジネスプランはすごい」と思わせる必要はありません。

むしろ「この人の計画はうまくいって毎月きちんと返済してくれる」という手堅さが一目瞭然で理解できる内容を、1枚の用紙にまとめることが肝心なのです。

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