自己資金だけの起業に潜むリスク

「自己資金だけで起業することが理想的だ」と考えている人は多いようです。

お金の面でだれにも頼らず自分の力で起業すれば、返済負担がないし他人に迷惑をかけることもないと思うのでしょう。でも実は、自己資金だけで起業することはとてもリスクが高いことなのです。むしろ、起業時に積極的に外部資金、とりわけ創業融資を活用するほうが賢明です。

私が「起業時に外部資金、とくに創業融資を利用したほうがいいですよ」とご説明するのには、三つの理由があります。

1.起業後しばらくはお金が猛スピードで減っていく

スタート時はお金が足りていても、起業した後は驚くほど減っていきます。起業前に見積もった初期投資や経費が、始めてみたら予想以上にかかることがあります。また、起業した直後は十分な売上が上がらず、しばらくは赤字が続きます。起業時から黒字スタートという人は、1割もいないと断言します。
さらに、早期に黒字化しても、売上が実際に振り込まれるまでに日数がかかり、その間先に経費が出ていくので、キャッシュが恐ろしい速度で減っていくのです。「これはいけない」と思って慌てて資金調達を考えても、その状態では資金提供者や融資先を見出すのは容易ではありません。
たとえ、自己資金が潤沢でも油断できません。大企業を退職して退職金をもらい資金的に余裕をもって起業した人が、1年もしないうちに廃業したということは珍しくないのです。また、「そんなに儲けなくても食えさえすればいい」という人もいますが、お金をかけずに続けていくのには限界があり、食えるどころかお金が足りなくなってある日バタッと倒れてしまうのがオチです。

ですから、起業時は外部資金を調達して、十分なキャッシュを確保したうえでスタートしたほうがいいのです。自己資金は、いざというときの資金としてとっておくのが安全です

2.起業時がもっとも融資を受けやすい

「万一お金が足りなくなったら融資を申し込みしよう」と考える人がいますが、起業した後だと金融機関はその業績を重視します。赤字や資金繰りが厳しい状況であれば、なかなか融資してくれません。起業する前であれば、収支の予測の妥当性を判断して融資しますから、実際の業績数値が出た後よりもはるかに融資を受けやすいのです。

3.資金調達のノウハウを早く習得することに意義がある

融資を受けることは、一つの重要な経営ノウハウです。事業を継続していると、必ずまとまった資金が必要になる場面に遭遇します。そのときに資金を調達しようと思っても、ノウハウがなければうまくいきません。
起業時に創業融資を受ける経験をしておけば、融資を受けるために必要な手続きや金融機関との付き合い方も理解できるので、その後に資金調達が必要な場面でもスムーズに行うことが可能です。

 以上のような理由から、自己資金だけで起業するのではなく、創業融資を活用することをお勧めします。

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