多くの起業志望者は、融資用の事業計画書を作ることにとても戸惑います。融資を断られたくないという気持ちが強いため、「いい事業計画書を作らなきゃ」と思えば思うほど書けなくなってしまうようです。
私は、そのような方へ「もっと楽しみながら作りましょう」とアドバイスをしています。
最初から創業計画書の様式に書き込むのではなく、まずは項目ごとに自由に思いつくことを書き出してみることをお勧めします。
たとえば、「創業の動機」であれば、「経験を生かしたい」「地元の高齢者の方へ貢献したい」「若い女性の○○のニーズに応えたい」など、たくさん出てきます。それを付箋紙に一つひとつ書いて、模造紙などの大きな紙に貼りつけていきます。
「事業の見通し」の項目は、売上や経費の予測をする必要があるのでハードルが高くなりますが、この方法で検討すれば見えくるはずです。少しずつ書き出していくと、自分の頭の中が整理されてきて、次から次へとアイデアが湧いてきます。
最終的にその中から、エッセンスとなるものを厳選して実際の創業計画書に記入するのです。どのようにして選ぶかについては、本書で説明しているノウハウを理解すれば、資金調達のためにベストな判断をすることが可能です。
この作業を行うと、頭でモヤモヤと考えていたことが整理されて、短時間で文字にすることができます。また、ビジネスプランがしだいに具体的に見えてくるので、とてもワクワクしてきます。完成した暁には、目の前がパーッと明るくなる感覚を覚えることでしょう。
事業計画書を作る作業を行うことによって、自分のビジネスの成功イメージが湧いてくるからです。
でき上がった事業計画書で審査にパスすれば、金融機関から見てもあなたのビジネスがうまくいくと判断されたことになるので、自信をもって事業を始められます。また、創業融資が受けられると、金融機関からの信用度が大きくアップします。起業後の資金調達もしやすくなるといえます。
事業経営では、「何かを求めて策を講じて仕掛けていく」という行動を繰り返して、成果を得ることが醍醐味です。目論見通りにうまくいったときは、大きな喜びと達成感を感じることができます。起業資金を調達することは、その行動の第一歩だと考えると、前向きな気持ちで取り組むことができるでしょう。
また、融資用の事業計画書を作ることは、資金を調達できるだけではなく、事業経営でもっとも大切な、お金に関するノウハウを得ることもできます。
「何にいくら投資すればいいのか」、「経費はどれくらいかかるか」、「売上をどれくらい上げれば採算がとれるか」、といったことを検討することで、実際に事業を開始した後の計数感覚を研ぎ澄ます訓練にもなります。経営者で数字(お金)に弱い人は、長く事業を続けることはできません。融資用の事業計画書を作るプロセスを通じて、経営に役立つ数字を学んでおけば、経営者としての能力も高まるのです。
融資用の事業計画書を作ることは、ビジネスの成功を引き寄せる大きな効果があるので、ぜひ楽しみながらやっていただきたいと思います。